【大谷#1】ISLAND STONE COFFEE ROASTERS〜shop ver.〜

「ルネサンス」

 宇都宮市大谷町は、古くから軽石凝灰岩石の採掘場として栄え、明治・大正時代には、日本の近代化建築を支えた。最盛期の昭和40年には、採掘場は約120ヶ所、年間出荷量も約89万トンまで増加し、迷路のような巨大地下空間が出来上がった。建築家フランク・ロイド・ライト設計の旧帝国ホテルに多用されたことは有名なエピソードである。しかし、安価な外国建材が台頭し需要が下がると、大谷町の人口も減少していった。そんな石の里が、おしゃれなカフェやレストラン、地下空間を生かしたアクティビティなどで、再び活気を取り戻しつつある。今密かに注目を集めている大谷を特集!

【2018年「地下迷路の秘密を探る旅 大谷石文化が息づくまち宇都宮」として日本遺産に登録された。】

「カフェ兼フラワーショップ」

【景観を損ねないシックな外観。】

 宇都宮中心部から車を30分ほど走らせると、だんだんと長閑な風景に灰色の岸壁が露出しはじめる。大谷町市営駐車場から徒歩3分ほどの、センスの良い建物が今回の目的地ISLAND STONE COFFEE ROASTERS(アイランド・ストーン・コーヒー・ロースターズ)だ。大谷街道沿いの住宅や古い商店に溶け込みながらも、一線を画すおしゃれさを放つこのカフェには、迷わずたどり着けるはずだ。去年(2020年)3月13日にオープンし、現在(2021年3月時点)は1周年記念月間である。

 入り口にはフラワーショップが併設されている。乙女心くすぐる花の良い香りを全身に浴びながら入店すると、まず、ダイナミックに張り出した大谷石を生かした設計が目を奪う。さらに、1階のドリンクカウンターが素敵なひとときを期待させる。2階とテラスも客席として使えるため、お気に入りの場所を見つけよう。自然光が差すガラス張りの壁と木の梁むき出しの天井が印象的な2階で、今回お話を伺うROCKSIDE MARKETマネージャー北舘光康さん(40歳)が爽やかに迎えてくれた。

【花の良い香りがお出迎え。花を日常使いする文化もつくっていきたいそうだ。】

「そして兼コミュニティハブへ」

 この店が最も大切にしている事の一つは、お客さんと会話をすることである。ここを「感度が高いお客さんやコーヒー好きのお客さんだけでなく、近所の年配の方々が毎朝来て、コーヒー飲みながら新聞を読むような場所にしたい」と北舘さんは語る。地元、それも近所という距離感で愛されることを目指している。どんな場所でも受け入れられる素敵な店であると同時に、高齢化が進む大谷に馴染む店にするために、お客さんとの何気ない会話生まれ、そして地元の常連客に愛されることはこの地域でやっていく意味なのだろう。築70年の建物をリノベーションしてつくったこの店は、地元の人ならば、猿橋商店があった場所として認知している。タイルや梁、窓のサッシなどは、猿橋商店のものをそのまま使用しており、地元に根差そうとする強い意志を感じる。宇都宮市の市街化調整区域に指定されているため、自由な新規参入ができない地域であるが、だからこそ、既存の資源を生かし、大谷を愛し、本気で取り組む人だけが挑戦できるのだ。

 地元外からの集客ももちろん経営において重要な要素である。味もサービスも空間も最高の質を提供することで、地方であることや歴史が浅いことをハンデとせずに勝負をしている。また、「栃木でコーヒーと言ったらここ!」という存在になれるように、情報発信や店舗外での販売を行っている。特に、全国どこの人にでもここだけの美味しさを届けられるオンラインストア販売は力を入れて取り組んでいる。コーヒー豆やアイテムの販売などを行っているので是非チェックしてほしい。

 地元のお客さんと、外からのお客さんの二つの客層をターゲットにしているか思いきや、少し違うようだ。外からのお客さんはもちろん必要だが、これは第一段階であり、そうして得た利益やブランド力を地元に還元することが最終目標だという。どこまでも地元思いなところに感嘆する。地元の人が誇り、集う店を目指して、ISLAND STONE COFFEE ROASTERSは2年目を歩き出す。

#2ISLAND STONE COFFEE ROASTERS〜person ver.〜に続く

  • ISLAND STONE COFFEE ROASTERS(アイランド・ストーン・コーヒー・ロースターズ)
  • 住所  :〒321-0345 栃木県宇都宮市大谷町1172
  • 営業時間: 10:00〜17:00
  • 休業日 :なし
  • 電話  : 028-688-0467
  • 駐車場 :なし 大谷町市営駐車場(無料)から徒歩3分
  • 備考  :大谷資料館に比較的近い