【大谷#3】クリエイティブ・リサーチ学生集団synchismoとは

 synchismo(シンシズモ)という名前を、デジタル大谷プロジェクトのクラウドファンディングで聞いたことのある人もいるのではないだろうか。synschismoが取り組んだデジタル大谷プロジェクトとは、大谷町にある大谷石地下採掘場の空間を3Dデータとして保存しまちづくりに活用するというものだ。今回のインタビューでは、「大谷町の地下空間をミライに残したい!」プロジェクトはクラウドファンディングのずっと前から始まる長期計画だったことや、さらにその前から最新技術を生かした興味深い活動を行っていたことが判明した。今回は、まだあまり知られていないディープなsynchismoの一面を代表の赤川英之さん(地デザ・建築・OB)と紐解いていく。

――まず、synchismoとはどういう団体で、どのように始まったのですか?

 2019年11月に宇都宮大学陽東キャンパスの喫煙所をフォトグラメトリの技術で3Dモデルを作るワークショップを開きました。そのときに集まってきたのが、飯泉一馬くん(工・電電・3年)青木岳大くん(地デザ・建築・3年)、あと一緒に作品を作ることも多かった山口睦生さん(地デザ・地域創生科学研究科・1年)。この時点でみんなある程度、3DモデリングやCGなどのニッチなデジタル技術や、その技術を使った空間の把握・設計に興味のある人たち人たちだったので、チームっぽいものを作ってみるかというノリで結成したのがきっかけです。本当に趣味の集まりみたいな。何かするために結成したわけではなく、純粋にテクノロジーに興味がある人が集まって、さて何をしようか、という流れですね笑。

【フォトグラメトリのイメージ図。案外気軽にスマホでできる。】

――プロジェクトのためではなく、やりたいことベースで結成したのですね!

 そうなんです。当時は大谷プロジェクトのビジョンとか何もなくて、やること決まってないのに漠然とチームだけ組んで。だからどういう団体かというと、テクノロジーに興味のある割とギークな人たちがその技術を使ってデザインとかアートをやろうとしている団体です。2019年の12月21日の昼に僕が原宿駅近くのイタリアントマトでLINEグループにチーム結成のトークを送ったのを鮮明に覚えています笑。

 実はまだどこにも書かれていないんですけど、2019年11月にコンペがあって、それにワークショップのメンバーで出ようとなって再集合したのもチーム結成のきっかけの一つです。行ったことのない場所に案内する地図アプリのコンセプトを提案しました。実装していないのですが、使う技術としてはGPSナビゲーションやAR技術がメインですね。それが終わってからチームができました。

――チーム結成から大谷プロジェクトまで期間が空いていますが、この期間にはどんな活動をしていましたか?

 実は3つくらいやっています。まず、2020年2月に大田原市にある一般社団法人「えんがお」の「みんなの家」の模型を作ってほしいというお願いを受けました。もともとそこは廃業した酒屋をそのままコミュニティハウス「みんなの家」として利用していたんですが、改修することになって、昔も今も地域の拠点だった味のある建物をいつでも思い出せるように残しておこうということで協力しました。フォトグラメトリの技術でモデリングして、最終的に3Dプリンターで出力し外装を模したシールを貼り付けたんです。結構リアルですよね。手のひらサイズなんですよ。この場所を利用していたおばあちゃんも「本物かと思うくらいリアル」って言っていました。

【一般社団法人えんがお「みんなの家」模型】

 そのあとに、Office for Architectをやられている先輩の実家を使わせてもらって屋内のモデリングにも挑戦しました。フォトグラメトリは対象物を中心において多角的に撮影する方法なので、撮影者が中心になってしまう屋内のスキャンは外形のスキャンとは全然違って難しかったですね。

 6月にはSafety Parkという公園の混み具合を知ることができるアプリを開発しました。僕が個人的にやりたくてメンバーに相談してプロジェクト化しました。ちょうど緊急事態宣言が出ていたときで、どの公園も子ども連れで賑わっていたんですけど、入場制限が出てしまう公園もあったりして。公園しか遊ぶところがないのにそれさえも制限されてしまうのは面白くないなと思って始めました。色々あってリリースまでできていないので、いつかしたいと思っています。

――大谷地下空間の3Dプロジェクトはいつ始まったのですか?

 着想は2020年の2月とかですね。具体的に動き始めたのは4月くらい。ぽっと出のプロジェクトだと思われがちなのですが、意外と前からやっているんですよ。宇都宮市役所の大谷振興室の方と補助制度の相談や、計測地をどうするかの話し合いに時間がかかって計画が3ヶ月くらい押して、11月に計測を実施しました。計測自体は1日でできて、地下の計測には4時間くらいかかりました。以前からご縁があったクモノスコーポレーション株式会社という測量会社に協力していただいて、3Dスキャンというレーザーを使った専門的な方法で行いました。レーザーが当たって返ってきた点が点群となって3Dデータになります。出来上がったデータを見てみると本当に精度高くできていて感動しました。一般の人が入れないところまで撮ってあるんですけど、非公開の部分が本当に広くて、ダンジョンみたいでめちゃくちゃ楽しいですね。

【3Dスキャンイメージ図】
【大谷の3Dスキャンデータ】

――クラウドファンディングを開始したのは2021年の2月。クラウドファンディングで得た資金を使って実行する流れかと思っていたのですが、計測が先なのですね。

 資金を集めてから活動を始めたり、協力を依頼したりするのが普通で、僕らの場合、見切り発車ではあるんですけど、各方面にかなり融通を聞かせてもらっていて。本当にありがたいです。2021年2月22日から開始したクラウドファンディングは60万円を目標にしていましたが、達成率124%ということで、計測費、企画費、今後の活動費に充てていきます。まだ具体的には決まっていないのですが、今後も大谷で引き続き活動していくつもりで、今回の3Dスキャンデータをどのように活用できるかや、地域に根差した活動にどのように繋げていけるかを模索中です。

――最後に

 やりたいことに社会貢献がついてくるのが幸せです。

synchismoクラウドファンディング