酸素が「酸素」と呼ばれるわけ

こんにちは。すみれです。まず、先日のイベントに参加していただいたみなさん、ラジオを聴いていただいたみなさん、本当にありがとうございました!

さて今回はタイトルの通り、酸素が「酸素」という名前になった理由についてのお話です。

この話は私がこども科学ラボを始める前からずっと書こうと思っていた内容ですので、しばしお付き合いください……。

酸素の名前の由来はずばり、「酸の素」です。しかしこの「酸の素」という表現ですが、ここに問題があります。「酸」ってつまりは、「酸性」の「酸」なのですが、高校で化学を勉強してきた方なら分るでしょう。酸性の性質を決める物質が、『水素イオン』であることを。

ここで少し高校化学の復習です。酸と塩基を決める「ブレンステッド・ローリーの定義」では、次のように酸と塩基を定義しています。

酸→相手に水素イオンを与える分子やイオン

塩基→相手から水素イオンを受け取る分子やイオン

そして酸性、塩基性の強さを示す「pH」は、次の式で求めることができます。

pH=-log10[H+]

公式を覚えているか否かはさておき、どこにも酸素(O2)は出てきません。

さて、ではどうして酸素は「酸の素」では無いのに「酸素」という名前になったのでしょうか。これには「酸素」という名前を付けた時代と人物が関係しています。

「酸素」という名前を付けたのは、アントワーヌ・ラボアジェという18世紀の超有名な科学者です。この方、質量保存の法則を見つけたり、「燃焼」の仕組みを解明したりとかなり大きな発見をした科学者なのですが、「酸素」という名前を付けた張本人でもあります。

1781年、ラボアジェはギリシャ語のoxys 「酸」+gennao 「生じる」にちなんで「酸素」と名付けました。しかしその後、次々と酸を示す原因の物質実は酸素では無いのではないかという研究結果が発表されるようになります。この辺りには、リービッヒ冷却器でも知られるリービッヒさんなどそうそうたる面々が関わっているので、興味のある方はぜひ調べてみてください。

結局、「酸の性質って何が原因で生じているのか?」という問いの答えは 水素イオン とされました。ラボアジェの 「酸の素」は間違いだったというわけです。

科学の進化には間違いが付き物です。科学の歴史を辿ってみると、地動説と天動説のように今では当たり前だと思われていることが、過去には宗教という面から全面的に否定されていたりします。現在通説とされていることは、過去の科学者たちが何度も何度も失敗を繰り返しながら解明されてきたものがほとんどです。その諦めない心は私たちも見習いたいものですね。

まとめ

  •  酸素という名前はラボアジェ(命名者)の誤解から付けられた。
  •  現在の科学の通説は過去の科学者たちの数多の失敗から生まれた。

ということで、今回は酸素という名前の由来についての話でした。ラボアジェの勘違いを責めるつもりは毛頭無いのですが、「酸素」 「酸化」 「酸性」 などと聞くと何となく酸素が関わっているのではないかと思ってしまうので、多くの化学基礎を学ぶ高校生を苦しめている気がします。化学は難しいと捉えられがち (実際難しい) ですが、過去の化学者たちを調べてみても面白いかもしれません。

追記

化学の日(10月23日)に合わせて何かしようと思っているのですが、良い案があまり浮かびません。何となくmolをテーマにしようと思っておりますので、何か希望がありましたらぜひTwitterのDMにでもご連絡ください!