File#1 フードバンクうつのみや学生メンバー

「フードバンクうつのみや コロナ禍学生に食品配布」

 NPO法人フードバンクうつのみやが、コロナ禍で経済的に困窮している学生を支援しようと、学生ボランティアとともに「学生応援きずなセット」と名付けた食品の配布会を企画・実施した。宮坂真耶さん(宇大・地デザ・コミュ・4年)は、フードバンクうつのみやの前身、NPO法人とちぎボランティアネットワーク(通称:Vネット)で3年前からインターンをしており、ここへの就職も決まっている。実は私の元インターン先の先輩である。宮坂さんは、フードバンクの会議に参加した際、学生としてコロナ禍で今できることを考え、この企画にボランティアとして参加することを決めた。

 2020年6月13日に宇大生のみを対象として第1回食品配布会を行い、113人に数種類の食品が入った紙袋を手渡した。一時的な支援ではなく、根本的な問題を探ろうと、来場者にGoogle Formsでコロナ禍の生活に関するアンケート調査も行った。この調査の質問文の作成やデータの分析においては、社会調査に詳しい宇都宮大学地域デザインセンターと協働しており、大学側が宇大生の実態を把握するうえでも役立った。回答者は100人ほどで、特徴的な項目は、食事回数の減少だったそうだ。それを受け、7月4日に行った第2回食品配布会では、対象を留学生や専門学生を含めた宇都宮市内の学生に拡大、さらに8月1日には、栃木県内の5つのフードバンク団体が連携し、栃木県内一斉食品配布会を行った。全体で430人以上に配布し、助け合いの精神を証明した。

「わたしは福祉畑と無関心層の中間」

 この食品配布会に参加した学生ボランティアは、Vネットの学生ボランティアチーム“Vレンジャー”を中心に10名を超え、コロナ禍でだれかのために行動したい人にとっても意義のあるものとなった。しかし、なぜこんなに無償で他人のために活動できるのだろう。

 宮坂さんは、高校時代から福祉に興味があり、福祉を含め幅広く社会学を学べるコミュニティデザイン学科に入学した。友達に誘われたことをきっかけに、大学1年生で学習支援のボランティアを始め、その年末に「ラジオのアルバイト」という言葉に惹かれてVネットと出会った(ちなみに私もこの文句に釣られてVネットでラジオ学生しました笑)。社会的マイノリティをゲストに迎えるラジオ番組でつながった、沢山の人の輪を失いたくないと、1年間の任期を終えた後もVネットに関わり続けた。「会報誌の執筆、1文字2円やるよ」と代表の矢野さんに言われ、自分が必要とされていることが嬉しかったそうだ(矢野さんは本当にこういう人です)。Vネットでの活動を続けていると、子どもの貧困問題が自然と身近になった。矢野さんが、「子どもたちとキャンプだ!キャンプだ!」と言い続けているのを聞き、宮坂さんを含めた周りが「じゃあやりますか!」ということになったそうだ。そうして、さまざまな事情で夏休みの思い出がつくれない子どもたちとのキャンプが実現した。この企画の運営に集まった学生や社会人が、のちにVレンジャーとして、継続的に子どもの貧困に立ち向かうボランティア集団となった。

 私も関わってみて分かったが、福祉は、身近でないと本当に無関心で無知な分野なのに、一度足を踏み入れるとその課題の多さや想像を超える実態をリアルに知り、無視できないものとなる。宮坂さんは、「福祉に深く入り込んだ少数派」と「無関心だがきっかけがないだけの多数派」の中間にいて、両者をつなぐ役割をしたいそうだ。その足はだいぶ浸かっているが、まだ極めきってもいない。だからこそできる「つなぎ役」を、学生ならではの立場で果たしている。実際に、コロナ禍で入学早々行き場のなかった1年生をサークル感覚でVレンジャーに迎え入れ、今やその子たちも、自分たちで企画を立て実施するほど実践的かつ主体的に活動している。宮坂さんの優しく穏やかな人柄が広げるあたたかい輪が絶賛拡大中だ。